症例選択
考え方
PCRは臨床診断や他の検査に基づき病原体を、活動性がある感染部位の検体から検出する病因検査方法。
検査項目は、そのPCRキットの対象病原体に限られる。
- 無目的に検査して、未知の病原体や過去の感染など、何でもわかる魔法の検査ではない。
使うPCRキットの対象病原体を事前に確認し、その病原体を疑う症例・除外診断が必要な症例のみに使用する。 - 今、そこにある病原体遺伝子を増幅するので、病原体が居ない検体からは検出できない。
活動性の炎症があることが必須。できるだけ治療開始前に検査を行う。
盲目的に様々な治療を行ってこじれてからPCR→検体中病原体量が感度以下まで著しく減少→PCR不適。
病原診断は治療前が鉄則。 - 前眼部に炎症の主座がある場合は前房水、後眼部疾患は硝子体が検出率が良い。
- 好感度だが、病原体量が少ない検体は単回検査で検出できないことも、感度以下もある。
- 検出病原体が必ずしも起炎病原体ではない。判断に量的情報が参考になる。
- PCRの結果は1つの情報として、臨床初見や他の検査結果として矛盾しないか、医師の総合判断が必要。
図 症例選択の考え方
ポイント
PCRが成功するかどうかは、検査に適切な時期に、適切な部位の検体が採取できたかどうかで、ほぼ決定する。
PCRの適応と限界を知り、どの疾患・検体に使用すべきかを見極めれば、自ずと良好な要請・陰性的中率が得られる。
予想した結果が出ない場合は、目的病原体の設定が正しいか、十分量の病原体を含む検体を採取できたかを確認。
- 臨床診断や他の検査に基づき狙った病原体が、検査キットの項目に含まれていること。
- 病原体を十分に含む検体(=今、活動性の炎症がある部位の検体。治療前検体が望ましい。)を採取すること。
病因診断前の"ちょっとしたステロイド"は、確定診断の貴重な材料を永遠に失うことにつながる。 - できるだけ炎症の主座がある部位の検体を採取すること。(前眼部疾患は前房水、後眼部疾患は硝子体。)
- 培養・鏡検など、他の検査に提供する検体も正しく確保する。
(例えば、眼内炎では、検体を冷凍すると培養できなくなるので、あらかじめステロイドグラス(滅菌しておくと便利)、増菌培養チューブ、PCR検体採取容器を手術室に持ち込み、各検査用に取り分けること。)
図 症例選択のポイント